大判例

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東京高等裁判所 平成5年(ネ)3429号 判決

主文

一、本件控訴を棄却する。

二、控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実及び理由

一、当事者の求めた裁判

1. 控訴の趣旨

(一)  原判決中、控訴人敗訴の部分を取り消す。

(二)  被控訴人らの請求を棄却する。

2. 控訴の趣旨に対する答弁

本件控訴を棄却する。

二、事案の概要

本件は、被控訴人らが、控訴人との株式の取引に関連して、控訴人の従業員が被控訴人らを欺罔して金員の騙取をしたとし、右行為につき、右行為が控訴人の事業の執行につきなされたとして、控訴人に対し損害賠償請求(遅延損害金を含む。)をしたところ、原審は請求を一部認容したので、控訴人が控訴した事案である。

そのほか、争いの前提となる事実、当事者の主張は、原判決の「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。但し、次のとおり訂正付加する。

1. 原判決四枚目裏七行目の「個人の」次に「大和銀行新宿新都心支店の普通預金」を加える。

2. 同五枚目裏八行目の末尾の次に「すなわち、被控訴人啓三は、株式取引について豊富な知識経験があったのであるから、控訴人が入札公募とは別に新規公開株を売り渡したり、新規公開株を買い付けるなどの業務を行わないことは知っていたか容易に知り得たことである。」を加える。

三、当裁判所の判断

1. 当裁判所は、原審の判断を正当とするものであり、その理由は、原判決「第三 争点に対する判断」と同一であるから、これを引用する。但し、次のとおり訂正付加する。

(一)  原判決六枚目表九行目の「いたこと」の次に「、羽生田は、昭和六三年七月以降、被控訴人らを担当する外務員になり、被控訴人らと控訴人との取引一切につき控訴人の担当責任者として業務を処理していたこと」を、同一〇行目の「3」の次に「、5」をそれぞれ加える。

(二)  同七枚目表四行目の「行われ」の次に「、被控訴人らから羽生田の欺罔行為による新規公開株の取引についての同人への連絡も、同支店の電話を通じて行われ」を加える。

(三)  同七枚目裏一行目の「あること」の次に「、被控訴人らは、本件新規公開株に関する取引は、控訴人の業務として行われていると認識していたこと」を加える。

(四)  同八枚目裏一〇行目の末尾の次に「甲二号証中の被控訴人啓三の供述記載も、同被控訴人の本人尋問における供述に照らせば、以上の判示を左右するに足りない。」を加える。

(五)  同九枚目表一行目の「基づかずに」の次に「他人名義を使用して入札取得したとして一般に顧客が入手することが困難とされる」を、同二行目の「いる」の次に「うえ、控訴人からは被控訴人らに控訴人と被控訴人らとの有価証券の取引明細等を記載した月次報告書が送付される約定になっていたが、右報告書(昭和六三年四月ないし六月分)に購入したとされる新規公開株の記載がない(乙二ないし六)」を、同五行目の「かつ、」の次に「そのような疑いを抱いた場合には、」を、同一〇行目の「考えられる」の次に「のみならず、昭和六三年七月以降、被控訴人らと控訴人との取引一切につき控訴人の担当責任者であった」をそれぞれ加える。

(六)  同九枚目裏三行目の「甲一、」の次に「一八、」を、同六行目の「いたこと」の次に「、個人名義の口座に振り込むことや被控訴人ら宛の月次報告書に記載のないことについても、羽生田から他人名義で買付けをするため会社の口座を使えないと言われたこと、他人名義だから自分宛の月次報告書に記載がないと理解していたこと」をそれぞれ加える。

(七)  同一〇枚目表九行目の「こと」の次に「、被控訴人啓三は、羽生田に勧められて購入した架空の新規公開株を控訴人に預託する扱いをしたので、昭和六三年六月初めころ、羽生田に控訴人発行の右株券の預り証を求めたところ、右預り証が交付されなかったのに、その後も羽生田のいうままに新規公開株購入代金名下に代金を振り込むことにより損害を拡大していること(被控訴人啓三本人)」を加える

2. 控訴人は、羽生田の行為は、他人名義で取得した新規公開株を譲るというものであって、控訴人の業務の範囲には属さず、同人の新規公開株に関する職務とは全く異なるものであり、同人の職務と密接に関連するとか、外形上同人の職務行為に属することはないと主張する。しかし、羽生田の前示の職務内容、羽生田は控訴人の顧客である被控訴人らの担当者であったこと、羽生田は、昭和六三年四月ころ、羽生田が顧客の永澤寿一名義で同人に無断で入札申込みをして正規の手続で落札したものの、右永澤が右落札を知らされて後権利放棄した日本アムウエイの新規公開株を取得する権利を、顧客の前島比都美の買入れの申入れにより、同人に入札価格を振り込ませた後、同人の希望で上場日後に売却し、売却代金を交付するなど、同人に永澤寿一が落札した新規公開株を事実上譲受取得させる仲介をしていること(甲七、一一)、羽生田は、控訴人新宿駅西口支店の幹部社員であることを総合すると、羽生田の行為は、控訴人の業務或いは羽生田の控訴人における職務と密接な関連を有し、外形上、同人の職務の範囲に属するといって妨げないというべきである。

控訴人は、新規公開株は、証券取引所市場等で売買は行われていないから、控訴人が売買の取次ぎを受託することはないとか、或いは、新規公開株の落札者の地位の売買又は売買の取次ぎを証券会社である控訴人がなし得ない行為であるなどと主張するが、仮に控訴人の主張のとおりとしても、羽生田の前記行為が外形上同人の職務の範囲に属するとの前示判断は左右されない。

四、以上のとおり、被控訴人らの本訴請求を右の限度で認容した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤滋夫 裁判官 宗方武 裁判官水谷正俊は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 伊藤滋夫)

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